税務調査どこまで調べる?時期、1日の流れ!修正申告まで
まだ一度も税務調査に入られたことがない個人事業主、中小企業の社長さんにとって、税務調査って不安ですよね?
でも、ここでは個人事業主、中小企業の税務調査が入りやすい時期、調査に入られたときにどこまで調べるのか?
事前通知から修正申告までの流れを詳しく紹介しているので、一通り読むことで心の準備ができると思います。
税務調査の時期で税務署の深刻度がわかる
税務調査が任意調査で行われる場合、調査の時期で税務署の深刻度がわかります。
任意調査には3つのパターンがあります。
- 強制調査するほどでもないが、所得を隠していることが濃厚で、追徴課税をしっかりと狙っている場合
- 会社の売上が増え、経費も増大しているので念のために調査に入る場合
- 単なるノルマを達成するために税務調査に入る場合
1に該当する税務調査は、ほぼ7月〜12月に行われます。
2,3に該当する場合は1月〜6月までの調査がほとんどです。
どうしてか、その理由を説明します。
税務署は毎年7月に定例の人事異動があります。
7月に新しい税務調査チームが発足するのですが、人事異動の評価は前年の7月〜12月の実績で決まります。
ですので、7月〜12月に行われる税務調査は気合が入っているのです。
1月〜6月に行われる税務調査は消化試合のようなもので、面倒にまきこまれないようにあまり厳しく税務調査は行いません。
この時期に任意調査に入られた場合は、納税者の言い分をかなり聞いてくれることがあります。
税務調査は2通り
まず税務調査には2通りあります。
任意調査と強制調査です。
税務調査の多くが任意調査ですが、通称「マルサ」という国税局査察部による「強制調査」が入ることもあります。
任意調査は、事前に調査に訪れる日の連絡が入りますが、「強制調査」は突然、会社だけでなく社長の自宅や工場などにも同時に調査が入ります。
任意調査の連絡は原則として、電話で行われ、税理士に税務代理を依頼している場合は、税理士に連絡が入ります。
税務調査対応をしてくれる税理士と契約していない場合でも、
事前通知の際に即答しないで「税理士と確認してから折り返し連絡します」と伝え、
税務調査に強い税理士を探して依頼することも可能です。
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「強制調査」は、裁判所の捜査令状を取っているので調査を拒否することはできません。
「強制調査」が入るということは、悪質で巨額な脱税の疑いがかけられているということですが、噂(タレコミ)だけで立ち入り調査が入ることもあります。
何も、悪いことをしていなければ真摯に対応すれば、相手もプロです。
真面目に経理をしていることをわかってもらえるはずです。
ここでは「強制調査」ではなく、「任意調査」について説明します。
任意調査は拒否できる?
「任意」という名称なので調査を拒否できそうですが、拒否はできません。
任意調査を拒否すると、国税通則法128条により1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
税務職員には、必要に応じて税務調査を行う権利が法的に認められていて、納税義務者に対して質問・検査等ができる質問検査権が与えられています。
ですので、質問検査権に基づいた税務調査を拒否したり、嘘をついたり、正当な理由がなく帳簿等を見せなかったりすると罰せられます。
「任意調査」といいつつも、実際はほぼ強制と同じです。
しかし、意図的な不正をしていなければ過度に恐れる必要もありません。
主張すべきことがあれば、はっきりと主張しましょう。
任意調査の日程は指定されても「変更」できる
任意調査の日程は、税務署が決めた日に必ず従わなくてはいけない。ということはありません。
1週間から1ヶ月の先延ばしなら問題はありません。
「体調が悪くて入院している」「泊まり込み出張で帰れない」
など正当な理由があれば1ヶ月を超えても税務署は待ってくれます。
時期にもよりますが、その後も資料準備などで年末に近い11月頃まで延ばすと、税務署は妥協しやすくなります。
というのも、税務署は年末が忙しく、大きな案件に時間を割きたいので不正取引ではない、少額経費の問題で時間を使う余裕がないからです。
税務調査 どこまで調べる
- 売上計上のズレ、漏れ
- 接待交際費の中に、個人の経費が入っていないか
- 在庫計上は正確か
- 人件費、外注費に架空がないか
- 関連会社との取引きは適正か
- 役員退職金は適正か
- 前年と比べて大きく増えた固定費
- 車両や社屋など大きな金額が動いた買い物 などなど
経費のごまかし
接待交際費
よくありがちなのが、家族旅行や、プライベートの食事、個人の買い物などを交際費に含ませる脱税行為です。
どこの会社でもよく目にするので、上手く隠したと思っても、バレると思っておいた方がいいでしょう。
在庫(棚卸資産)
在庫を過小に申告する会社も多いですが、調査官もよくわかっているので、かなり詳しく調べてきます。
抜粋した商品の仕入れから販売までの流れを一つづつ見ていきます。
そこで、不正が発覚したら全在庫商品を対象に調べられることもあります。
社長のパソコンの中に、裏帳簿で正しい在庫表が発見されたらアウトです。
売上
売上の漏れも、飲食店や小売店などは調査官が事前にお店で飲食したリ、購入したりしてその時のレシートを保管しています。
その売り上げが、きちんと計上されているか確認します。
売上をごまかしたお金を個人の通帳に入金する人が多いですが、社長の個人の通帳も確認するので、おかしい入金はすぐにばれてしまいます。
銀行も税務署が照会をすれば、社長の了解を得なくても通帳を開示するので、丸わかりですよ。
人件費
架空の人件費は、タイムカード、履歴書、銀行振込明細書、社会保険などで調べます。
アルバイトを多く使う会社ほど、詳しく調べられます。
外注費
外注費もおかしいと思ったら、「反面調査」で外注先まで出向いて調べます。
外注先は、先方からすると売上になるので、本当の金額より大きくして税金を余分に支払うことはしないので、外注費を水増ししていても、かなりの確率で露見します。
「反面調査」で注意しなくてはいけないのが、仕入れ先だけでなく、得意先にも調査が入ることがあることです。
何もなくても、「何か悪いことでもしているのではないか?」と疑われることになって、取引に影響が出ることも考えられます。
できることなら避けたいのが「反面調査」です。
調査の内容に応じて、預金の動きを確認するための「銀行調査」も行われます。
税務署の調査官は、税務調査に入る前に、会社の3年間の決算書を横並びにしてチェックしているので、大きく増えた経費があると「何かあるな。」と思うので注意してください。
内定調査
飲食業や宿泊業などのように、一般消費者を顧客層とする業種には内定調査が入ることがあります。
店舗付近で客の入りを確認したり、必要に応じて担当官が客を装って入店し従業員数や客単価を調査します。
その調査をもとに売上予想を立て、内偵による収支予測と申告内容との間に乖離があるかをチェックします。
外観調査
社長の自宅を訪れ、過度に豪華でないか、修繕痕はないか、自動販売機を設置しているかなどを調べたりします。
これは、社長個人の支出を会社の損金として計上していないかの確認です。
中小企業の税務調査「任意調査」1日の流れ
事前に調査日が税務署から連絡が入ります。
ある程度、日程を調整することができるので、調査日が決まったら必ず税理士に立会いを依頼しましょう。
顧問税理士が税務署に「税務代理権限証書」を提出している場合は、税理士にも事前通知が来ます。
税理士とは、事前に必要書類や税務調査の流れ、対処方法などについて打ち合わせをしておきます。
顧問税理士は事業内容や経理・納税の状況を把握しており、税務調査に立ち会う機会も多いので、アドバイスを受けられます。
調査当日は、質問の内容によっては税理士に回答を任せることも可能です
税務調査は2日間
税務調査 初日
10:00〜12:00
初日の午前中は、社長に会社の概要について質問されます。
中小企業の社長は忙しいので、この午前中だけ税務署員の相手をすれば、それ以降は同席する必要はありません。
午前中に質問される主な内容
- 業界の状況
- 会社の組織、従業員数
- 売上について営業から受注、納品、入金までの流れ
- 売上を計上するタイミング
- 社長の趣味
- 会社を設立する前の経歴 などなど
ここで注意してほしいのが、社長の趣味の費用が経費に計上されていないか?
売上は請求書を発行したときではなく、「商品を引き渡したとき」や「サービスを提供したとき」が売上計上になるということを確認しておくことです。
場合によっては、売上のごまかし、不正経理と取られてしまいます。
12:00〜13:00
税務署の調査官は食事を用意しても食べることはありません。
必ず外に食べに行きます。
13:00〜16:00
あらかじめ、用意しておいた資料への調査が始まります。
資料は事前に、調査官から用意する資料の指示があります。
調査中にも、追加の資料が要求されることがありますが、税理士あるいは社員が提出できればいいですが、
社長しかわからない資料があれば、翌日までに用意しておくことになります。
16:00〜16:30
16時頃には調査は一旦終了になります。
調査で問題となった箇所や、翌日に用意してもらいたい資料の打ち合わせをして調査官は税務署に戻ります。
税務調査 2日目
10:00〜12:00
資料調査
12:00〜13:00
昼食
13:00〜16:00
資料調査
16:00〜〜16:30
2日間の調査内容について概要の報告があります。
問題があれば、その場で説明があることもありますが、その場では詳しい説明はありません。
調査の間、調査官は怪しいと思ったところをドンドンコピーを取っているので、資料を持ち帰り、精査したのち上司に報告し「否認事項」が決定します。
会社でコピーを取ることができない場合は、調査官が資料を借りていくこともあります。
留置き
調査官が納税者の承諾を得て資料を借りていくことを「留置き」というのですが、
業務に必要な書類を税務署が借りていくことになれば、仕事に支障が出てしまいます。
重要な書類は、事前にコピーしておくと安心です。
税務調査 結果
調査日から1週間〜1ヶ月後ぐらいに税務署から「否認事項」と「追徴税額」の連絡が入ります。
「否認事項」と「追徴税額」に意義がなければ、「修正申告書」を作成し、税務署に提出し、追徴税額を納付すれば税務調査終了です。
2日間の調査結果で、税務署の「否認事項」がなく、申告内容が「是認」ならば修正申告書を提出する必要はありません。
修正申告の場合、不足分の税額を納めるのですが、納期限を過ぎているため、不足分の税額に加えて延滞税や過少申告加算税、重加算税がかかることがあります。
追徴税額が高額で支払うことが出来ない時は、相談すれば分割にしてくれます。
しかし、とても高率な延滞税がかかります。
利息:年利14.6%。(修正申告書を提出した日から2ヶ月は約4%)
否認事項は税務署の判断
否認事項は税務署の判断で決まります。
こちらが正しいと思っても、税務署が否認すればそれまでです。
ここで、税務署とやりあうことができるかどうかは税理士の力量次第。
多くの税理士は税務署の言うがままに従うケースがほとんどです。
税理士は税務署員との接触の機会が多いことから、悪い印象をもたれないようにと、なあなあで済ますからです。
裁判をおこす
経理処理が正しいと確信しているのなら裁判することもできます。
経理処理が絶対に正しく、税務署員が間違っていると確信するのなら、
修正申告に応じずに更正処分を願い出て裁判をチラつかせるのも一つの手です。
経理処理は正しいと強気で主張することで、裁判用の資料作成を面倒がる調査官が譲歩することが多いです。
修正申告も裁判の更生処分も、金銭的な負担は変わらないのでやってみる価値は大いにあります。
税金の還付請求
税務調査はなにも、税金を追加で納めるだけではありません。
反対に税金を納め過ぎていることがわかれば、税金の還付を受けることができます。
税務署に更生の請求をするのですが、期間が原則として法定申告期限から5年間と定められています。
更正の請求を行うケースは少ないですが、せめて顧問税理士に追加納税がないように頑張ってもらいたいですよね。
税務署員のウソと脅しの手口
税務署員にはノルマがあります。
そのノルマを達成するために、ウソをついたり脅したりすることがあります。
もちろん、税務署に「ノルマがあるのですか?」と聞けば「ない!」とハッキリ答えるでしょう。
しかし、年度当初に事業計画を税務署は作成します。
そこで税務調査に割り当てる日数が発表されるのですが、
日数がでると「この期間があれば税務調査はこれくらいできる」と判断し各部門に税務調査の件数が提示されます。
この件数が実質的なノルマになり、件数をこなさなければ税務担当職員の人事評価に影響します。
そして、前年度の実績が目安になり、税務調査件数、追徴課税の金額が前年度の実績を上回れば部署の評価も上がることから、
「これくらいは上積みしたい」と大体のノルマラインが見えてくるのです。
追徴課税をあげる手法としては、こんな「ウソ」や「脅し」が使われます。
たとえば領収書の二重計上が見つかった場合、それがうっかりミスだとしても、わざとやったとして重加算税の対象にしようとするのです。
繰返し、うっかりミスと説明をしても税務署員はこう言うのです。
「もし、承諾していただけないのであれば、次は査察に入られるかも?それでもいいですか?」
「査察が入れば、新聞やニュースになる可能性もありますけど・・・。」
もちろん、うっかりミスでは重加算税にはならないし、「査察」自体も事前に通告されることはありません。
こちらの知識不足を利用して「ウソ」と「脅し」をかけてくるのです。
もちろん、しっかりした税理士が立ち会ってくれていれば、こんなことは起こらないでしょう。
しかし、国税庁が公表している直近のデータでも、税務調査が入った先の8割は、追徴課税を払っている実態があります。
税務署員に注文をする
横柄な税務署員に抗議
税務署の調査官の中には、かなり横柄な態度の人もいます。
偉そうな態度を取ったり、高圧的な態度を取っている場合は、抗議しましょう。
それでも、態度がよくならなかったら調査官の勤務する税務署の「統括官」に電話を入れます。
「統括官」は調査官の上司にあたり署内では課長と呼ばれています。
税務署員は「納税者との折衝能力」が評価項目にあるので、上司に連絡をするとかなり効果があるはずです。
実際に連絡をしなくても、「態度を改めてもらえなければ電話しますよ。」と言うだけで態度は改められると思います。
税務署員だからといって、こちらが低姿勢に出る必要はありません。
会社にスペースがない
会社の事務所やお店などに、調査官が調査するスペースを確保できない時は、顧問税理士の事務所や税務署の中に移動してもらうことができます。
ただ、必ず会社あるいはお店は見に来るので1日目の午前中は社長から概要を聞いて、午後から移動するというケースになります。
税務調査対策 税理士に相談
税理士と顧問契約をしているのなら、税理士が税務調査に立ち会ってくれます。
しかし、ここで税務署の言うとおりに従うのか、問題はないと筋を通すことができるのか税理士の力量が問われることになります。
まだ、税理士と契約していなければスポットで税務調査の時だけの対策、立ち合いをお願いすることができます。
個人で希望する税理士を探すことは難しいのと、緊急を要するので、税理士探しは税理士紹介サービスで探します。
おすすめは、国内最大の税理士の登録数を有す、税理士ドットコムです。
数多い税理士紹介サービスの中で、唯一の上場企業が運営していて信頼できるのと、
24時間受付けているので、素早い対応を取ることができます。
要望を伝えるだけで、近隣でスポットの税務調査に対応できる税理士を紹介してもらえます。
税務調査が入りやすい会社の特徴
国税局指定の重点業種
過去の申告内容で不正の発覚件数が多いため、税務調査のマーク対象としている業種
*シェアリングエコノミー、FXやオークションなど、インターネット取引を主とするIT関連業種や飲食業、風俗業、建築関連業など
税務調査を長年受けていない
税務調査は、通常4〜5年に1度程度の割合で行われていますが、それ以上の長い期間、税務証の実地調査を受けていなければ、いつ税務調査が入ってもおかしくありません。
売上や経費などの金額が大きく変動した
税務署が運用しているKSKシステムでは、同じ業種や規模の企業と比較したり、前年度や平均値と比較したりすることができます。
申告した金額に大きな変動があった場合、このシステムでピックアップされます。
異常値と判断されれば、税務調査の対象になります。
売上の伸びよりも経費の伸びが増加していると、経費の水増しが疑われ特に調査対象になりやすいです。
赤字が続いている場合でも、何か不正を働いて赤字となっている可能性がある場合には、調査の対象となることがあります。
売上1,000万円以下の申告が続く
消費税を納めなくてもよい売上1,000万円未満で確定申告し続けると税務調査が入る可能性が高いです。
個人事業主が売上1,000万円以下で申告し続けている場合、帳簿操作していると思われ消費税の脱税を疑われます。
税務署は、同じ業種や同じ規模の事業と比較したりして常にチェックしています。
異常値が出ていたりすると、税務調査の対象となる可能性があるでしょう。
既に税務署のターゲットとなっているかもしれません。
建設業が狙われている
国税庁が令和3年11月に発表した「令和2事務年度 法人税等の調査実績の概要」から上位10社をまとめてみました。
順位 | 業種目 | 不正発見割合
(%) |
順位 | 業種目 | 不正発見割合
(%) |
---|---|---|---|---|---|
1 | バー・クラブ | 53.7 | 2 | 外国料理 | 52.0 |
3 | 美容 | 37.5 | 4 | 医療保険 | 36.7 |
5 | 生鮮魚介そう卸売 | 36.2 | 6 | 一般土木建築工事 | 36.0 |
7 | 職別土木建築工事 | 36.0 | 8 | 中古品小売 | 33.3 |
9 | 医療関連サービス | 33.3 | 10 | 土木工事 | 33.2 |
出所:国税庁「令和2事務年度 法人税等の調査事績の概要」
ご覧のように、建設関係が上位10社の中に3業種も入っています。
- 6位:「一般土木建築工事」
- 7位:「職別土木建築工事」
- 10位:「土木工事」
1件当たりの不正所得金額も一般・職別土木建築工事が1,800万円以上、土木工事は1,300万円以上と、
高額ことから調査対象となりやすいです。
建設業が、税務署の調査官からは注視するべき業種と認識されていると考えていいでしょう。
対策としては、建設業の税務調査対応に強い税理士に相談し、調査時のポイントを抑えた早めの対策をとっておくことです。
前回の税務調査で不正の指摘を受けた
前回の調査で多額の申告漏れや計上ミスなどの不正を指摘された場合は、再調査の期間が短くなることがあります。
申告していなくても税務調査は入ります
申告書を提出しなければ、調査対象にならないと思っている人は多いのですが、
無申告は、税務署がもっとも力を入れている調査対象です。
無申告は、取引先の調査、第三者からのタレコミ、銀行の履歴などから、いつか必ず税務署が知ることになります。